顔文字と日本文化。見立て・文字と絵の距離感

メールでネットで。
電子画面表記で使われる顔文字。

種類とバリエーション、表現の豊富さ。
とても面白いなぁと思います。

( ; _ ; )
無機質に記号名で読めば「かっこ セミコロン アンダーバー セミコロン かっこ」。でも、一つの顔として見ると寂しそうにちょっと泣いている様子。セミコロン;を目と涙に見立てるのもなるほど納得。

(*>ω<)
数学記号 >(不等号)はギュッと目をつむった様を表現、ギリシャ文字のオメガωが鼻か口となり(どっち?)、アスタリスク「*」が可愛い女の子の花飾りに。(と思っている)。
鼻なのか口なのか、髪飾りなのか単なる装飾なのか。判断が個々人で違ってもニュアンスは通じるのがまた奥深い。

(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
両端にある()の連続が、震えて動揺している様子を見事に表現。さらに、先程の「目と涙」だったセミコロン;が額から流れる汗に早変わり。(!)
そもそも、ほとんどの顔文字の基本であり、かつ常識()、かっこ内を顔の範囲にした最初の人も本当にスゴイ。

本来の文字・記号が持つ意味を無視して、顔文字表現の一部にしてしまうその大胆で柔軟な発想。文字だけでは伝わらない雰囲気まで伝えられる実用性。シンプルなものでも、最初に考えた人は本当にセンスあるなぁと思います。

 

種類の豊富さは、ニュアンスや好みに。
同じ言葉でも、顔文字を変えれば違う意味合いに。

そんな事言われても (´・ω・`)
困ったよう…

そんな事言われてもヽ(`Д´#)ノ
怒り!ムキー!!

そんな事言われても(*’へ’*) ンー
どうしよっかなーー。

そんな事言われても ┐(゚~゚)┌
話になんないよ。お手上げ〜

そんな事言われても .。゚+.(´∀`○)゚+.゚。

 

場合によっては、言葉よりも端的に気持ちを表現できる顔文字。複雑なものや個々人のオリジナルアレンジもあったりしますが、この顔文字文化は、日本庭園や日本美術の「見立て」文化に通じるところがあるなぁ、、、

…と思い、見立て関連の本を何冊か読んでいたら、面白い本を見つけました。

高階秀爾さんの著作『日本人にとって美しさとは何か』。
日本人の美意識について、いくつもの切り口から見てく内容ですが、携帯メールの絵文字も日本的だとの記述もあり、嬉しくなりました。
この他、顔文字は日本文化の「絵と文字の距離感の近さ」にも関係がありそうだなぁとも思いました。

もともと、美術・芸術・音楽・工芸、、に明確分けが無く・曖昧だった日本。

一首の時代から絵と文字はキッパリ分断されず、作品の中で同居する存在として扱われることも多く、文字が絵画的表現をしたり、同列の役割を持ってデザインされていたりするのは、西洋では珍しいことなのだとか。

「へのへのもへじ」然り。
有名所でいえば、富嶽三十六景で有名な葛飾北斎の「六歌仙図」。描かれた喜撰法師が着ている衣に平仮名「きせんほうし」を隠した遊び心ある作品です。この他、京都国立美術館に所蔵されている「鶴下絵和歌巻」では、画と一体になった秀逸な文字装飾も。和歌の「散らし書き」なんかも絵画的表現。
さらに時代をさかのぼり、その傾向は古今和歌集でもあるとか何とか。

一方の西洋では、古くから文字と絵画が同居することはほぼ無く、キリスト教系の古い書籍でも文字と絵のスペースは明確に分断されているのが普通。西洋で文字と絵画表現・装飾の距離が近づくのは19世紀のウィリアム・モリス位からで…
さらにそのウィルス・モリスも、日本文化に影響されてとか。

 

顔文字の発展系。
猫のミミに見立てた記号、こたつの布模様として使った「※」。一番関心したのは「元旦」の「旦」の字を、お茶と茶托(ちゃたく)に見立てたところ!スゴイ…!!!

次。

コレなんて↑「見立て」のみならず、日本の和歌にある「本家取り」の考え方に通じるところさえ感じます。

「本家取り」というのは、百人一首でも有名な歌人・藤原定家がよく使っていたという、過去の有名な名歌をアレンジして新たな自分の作品を作るというもの。パロディ。

しかも可愛い。
気が抜ける感じで、戦意喪失させるほのぼのさが素敵。

 

顔文字の種類、私自身はあまり知りませんが、興味あって検索していたら面白いのがたくさんありました。海外のアスキーアートのように点と線だけで陰影を表現したモザイク画もソレはそれで凄いですが、最小限の記号だけで形の特徴をつかんで表現する顔文字は、なかなか粋なもの。

この他、最近知ったのはインターネット動画「ニコニコ動画」で使われる「8」の連続の意味。
888888888と書いて「パチパチパチ」と拍手している意味なのだとか。ニコニコ動画で「888888888888」と大量の八が画面いっぱいに流れる様子は、ホール等で拍手喝采、音が鳴り響く様とリンクする見事な表現。コレなんかは、オノマトペの要素も入っていて面白い。

「上品」「格のあるもの」ともされる日本美術や伝統技法。
それと現代の電子表現を比べるのは、人によっては眉をしかめることかもしれませんが、私はこれらの表現に古くから流れる日本人の美意識?を感じて面白いなぁと思ってしてしまうのです…。

参考:高階秀爾さん『日本人にとって美しさとは何か』2015.9.24、筑摩書房